「夜中に何度も目が覚めてしまう」
「一度起きるとなかなか眠れない」
ぐっすり眠ったはずなのに途中で目が覚めてしまうのは、多くの人が抱える睡眠の悩みのひとつです。特に40代・50代になると、ホルモンバランスや体のリズムの変化も影響し、“中途覚醒”と呼ばれる現象が起こりやすくなります。しかし、その原因は加齢だけではありません。生活習慣やストレス、寝室の環境、さらには枕やマットレスなど寝具の合わなさが関係していることも少なくないのです。
この記事では、上級睡眠健康指導士である筆者が、夜中に目が覚める主な原因とその改善策をわかりやすく解説。今日からできる対策や、睡眠の質を高める寝具選びのポイントまで紹介します。
この記事の監修者
身長175㎝/体重62㎏。眠ハックの運営者。睡眠で悩む人の相談を受けたり講習会を通して睡眠の大切さを世に広める活動をしている。マットレスや枕選びはYouTubeで好評受付中。
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※本記事は、上級睡眠健康指導士による知見をもとに一般的な情報を提供するものです。病気の診断や治療を目的とした内容ではありません。症状が長引く場合や日常生活に支障がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
夜中に目が覚めるのは珍しくない?まず知っておきたい基本
「夜中に一度でも起きてしまうのは異常なのでは…?」と不安になる方も多いですが、実は誰にでも起こる自然な現象です。人間の睡眠は「レム睡眠(浅い眠り)」と「ノンレム睡眠(深い眠り)」が90分前後の周期で繰り返されており、その切り替わりのタイミングで一時的に覚醒するのは正常な反応です。
年齢とともに増える「中途覚醒」
特に40〜50代以降になると、「中途覚醒」と呼ばれる夜間の覚醒回数が増える傾向が見られます。これは、加齢とともに深いノンレム睡眠が減少し、浅い眠りが増えるためです。眠りが浅くなると、少しの物音や体の違和感などでも目が覚めやすくなります。
加齢による中途覚醒は自然な変化であり、それ自体がすぐに病気を意味するわけではありません。
専門家コメント
上級睡眠健康指導士 今真一
「起きた=悪い」ではないと知っておこう
夜中に一瞬目が覚めても、そのまま自然に再び眠りにつけるなら心配はいりません。問題になるのは、「目が覚めたあと眠れなくなる」「何度も繰り返す」といった場合です。これらは体や生活習慣からの“サイン”であり、放っておくと睡眠の質が下がり、疲れが取れにくくなることもあります。
また、寝具が体に合っていないと、首や腰の違和感などが原因で目が覚めやすくなることがあります。再入眠が難しいと感じる場合は、生活習慣だけでなく寝具の状態も一度見直してみましょう。
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夜中に目が覚める主な原因【生活習慣・体の状態・環境別】
夜中に目が覚める原因はひとつではありません。生活習慣や心身の状態、寝室の環境などさまざまな要素が複雑に絡み合っています。ここでは、代表的な原因を分かりやすく整理して解説します。
就寝前の習慣が睡眠リズムを乱している
スマホやパソコンの画面を就寝直前まで見ていませんか?
ブルーライトは脳を覚醒させ、眠気を誘うホルモン「メラトニン」の分泌を抑制します。その結果、眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなってしまいます。
また、寝る直前の激しい運動や熱いお風呂も交感神経を刺激し、体が「活動モード」のままになってしまうため、途中で覚醒しやすくなります。
専門家コメント
上級睡眠健康指導士 今真一
② カフェイン・アルコール・喫煙の影響
「寝酒をすると眠りやすい」と思われがちですが、アルコールは入眠を助ける一方で後半の睡眠を浅くするため、夜中に目が覚めやすくなります。
また、午後遅くのカフェイン摂取も要注意。カフェインの覚醒効果は6〜8時間続くため、夕方以降にコーヒーや緑茶を飲むと、眠りの質が低下する可能性があります。
喫煙も同様に交感神経を刺激し、眠りを妨げる原因になります。特に就寝前の一服は中途覚醒を招く大きな要因です。
③ ストレスや不安など心理的な要因
仕事や人間関係のストレス、不安な気持ちなど心の緊張が続いている状態では、眠っていても脳が“軽く起きている”ような状態が続きます。そのため、眠りが浅くなり、ちょっとした刺激で目が覚めてしまいます。
現代人の中途覚醒にはこの「心理的要因」が深く関係しているケースが非常に多く、ストレス対策が改善の第一歩になることも珍しくありません。
④ 加齢やホルモン変化による睡眠構造の変化
40〜50代になると、深い眠り(ノンレム睡眠)の割合が減少し、浅い眠りが増えるため、中途覚醒しやすくなります。また、女性の場合は更年期のホルモン変化も睡眠に大きく影響し、夜中に何度も起きてしまうケースが増えます。
このような加齢による変化は自然なものですが、生活習慣や睡眠環境を整えることである程度は軽減することが可能です。
⑤ 睡眠環境(温度・湿度・光・音・寝具)の問題
寝室の温度が高すぎたり低すぎたりすると、体温調節がうまくいかず途中で目が覚めてしまうことがあります。理想的な寝室環境は18〜20℃前後・湿度50%前後。また、街灯の光やわずかな物音も浅い眠りの時には刺激となりやすいので、遮光カーテンや耳栓の活用も有効です。
さらに見落とされがちなのが寝具の影響です。枕の高さが合っていないと首や肩に負担がかかり、違和感で目が覚めることがありますし、マットレスの硬さが合わないと寝返りが増えて睡眠が浅くなることもあります。
専門家コメント
上級睡眠健康指導士 今真一
⑥ 睡眠時無呼吸症候群・頻尿など体の不調が原因のケースも
睡眠中に何度も目が覚める場合、体の不調が原因になっていることもあります。
代表的なのが「睡眠時無呼吸症候群」。いびきや呼吸の一時停止が起こるたびに脳が覚醒するため、深い眠りが得られません。
また、夜間頻尿や糖尿病、甲状腺機能の異常なども中途覚醒の原因となる場合があります。
このようなケースでは生活習慣の改善だけでは解決しにくいため、医療機関での相談が必要です。
夜中に目が覚める原因は、生活や心身の状態、環境、そして寝具まで多岐にわたります。自分に当てはまりそうな要因を一つひとつ見直すことが、改善への第一歩になります。
原因別の改善策|今日からできる対処法
夜中に目が覚める原因はさまざまですが、多くは日々の習慣や環境を整えることで改善が可能です。ここでは、原因ごとに実践しやすい対処法を紹介します。
生活習慣を整えて“途中で起きない体”をつくる
睡眠の質を高める基本は、「体内時計を整える」ことです。
毎日同じ時間に起き、朝の光をしっかり浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。就寝・起床の時間がバラバラだと睡眠リズムが乱れ、中途覚醒もしやすくなるため注意しましょう。
また、日中に軽く体を動かすことも重要です。適度な運動は夜の深い眠りを増やし、途中で起きにくくなる効果があります。
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上級睡眠健康指導士 今真一
寝る前1〜2時間は「脳と体のクールダウン時間」にする
就寝直前までスマホやパソコンの画面を見るのはNGです。ブルーライトの刺激で脳が興奮し、眠りが浅くなります。寝る1〜2時間前は“光刺激の少ない静かな時間”を過ごすことがポイントです。
入浴は就寝の1〜2時間前までに38〜40℃のぬるめのお湯に浸かると、副交感神経が優位になり深い眠りに入りやすくなります。また、寝る前にストレッチや呼吸法、日記などで心を落ち着けるのも効果的です。
カフェイン・アルコール・喫煙を見直す
午後3時以降のカフェイン摂取は控えましょう。コーヒーだけでなく緑茶や紅茶、チョコレートなどにも含まれているので注意が必要です。
寝酒習慣がある方は、できれば少しずつ減らしていくことが理想です。アルコールは入眠を助けても後半の睡眠を浅くして中途覚醒を起こしやすくします。
喫煙も同様に交感神経を刺激するため、就寝前の一服は避けるのが賢明です。
ストレスを軽減して脳を“休息モード”に切り替える
心理的なストレスが強いと、眠っていても脳が半分覚醒したような状態が続きます。
寝る前に「今日の心配ごと」を紙に書き出す「書き出しジャーナリング」は、不安を頭の外に出す方法として有効です。
また、深呼吸や瞑想、アロマなど、自分に合ったリラックス法を見つけて続けることが、中途覚醒の減少につながります。
寝室環境を見直して“起きにくい空間”をつくる
室温・湿度・光・音といった睡眠環境を整えることは、想像以上に重要です。
理想的な環境は18〜20℃前後・湿度50%前後。エアコンや加湿器を活用して快適な空間を保ちましょう。外からの光や音も浅い眠りを妨げるため、遮光カーテンや耳栓の利用もおすすめです。
そして、もうひとつ見逃せないのが寝具の見直しです。
枕が高すぎる・低すぎると首に負担がかかり、違和感で夜中に目が覚めてしまうことがあります。マットレスが硬すぎて肩や腰が痛くなったり、柔らかすぎて沈み込んで寝返りが増えたりする場合も同様です。
「最近夜中に目が覚めやすくなった」という方は、まずは寝具が体に合っているかを確認してみましょう。
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上級睡眠健康指導士 今真一
⑥体の不調が疑われるときは医療機関へ相談を
生活習慣や環境を整えても改善しない場合は、体の不調が隠れている可能性も考えられます。
いびきが大きい・呼吸が止まると指摘された・何度もトイレに起きる──こうした症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群や夜間頻尿などが原因の可能性があるため、医療機関への相談を検討しましょう。
夜中に目が覚める問題は、「年齢のせいだから」とあきらめる必要はありません。生活習慣・環境・寝具など、一つひとつを見直すだけでも睡眠の質は大きく変わります。まずは今日からできることから少しずつ取り入れていきましょう。
それでも改善しないときは?受診の目安とチェックポイント
生活習慣を整えたり寝室環境を改善したりしても、夜中に目が覚める状態が長く続く場合は、体の中で別の原因が潜んでいる可能性があります。無理に我慢せず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
「週に3回以上・1か月以上続く」なら受診を検討
夜中の覚醒が次のような状態に当てはまる場合は、自己対策だけに頼らず専門機関の受診を検討しましょう。
あなたの状態は?
- 週に3回以上、中途覚醒が起きている
- 1か月以上、同じ状態が続いている
- 夜中に目が覚めると再入眠できないことが多い
- 日中の眠気・集中力低下・倦怠感が続いている
- 大きないびきや「呼吸が止まっている」と指摘されたことがある
夜間の頻尿が気になる
これらは、不眠症・睡眠時無呼吸症候群・ホルモンバランスの乱れ・内臓疾患などが関係している可能性があります。
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上級睡眠健康指導士 今真一
睡眠外来・内科など相談先の選び方
まずは、内科や心療内科など一般的な医療機関で相談してみましょう。問診や血液検査、必要に応じて睡眠検査を行い、原因を特定してもらえます。
特に「いびきをかく」「呼吸が止まっていると言われた」という方は、睡眠外来や呼吸器内科が適しています。
また、更年期やホルモンの影響が疑われる場合は、婦人科や内分泌内科での相談が有効です。専門家による評価を受けることで、睡眠薬以外の治療法や生活改善の方向性が見えてきます。
夜中に目が覚める原因は人によって異なり、自分だけで判断しきれないケースも多くあります。「我慢せず相談する」ことも立派な対策のひとつです。 早めに受診することで、睡眠の質だけでなく日中の生活の質まで改善する可能性が高まります。
まとめ|原因を知って、今日から“朝までぐっすり”を目指そう
夜中に目が覚めてしまうのは、決して珍しいことではありません。睡眠はもともと浅い眠りと深い眠りを繰り返すもので、1〜2回程度の覚醒は誰にでも起こる自然な現象です。大切なのは、「なぜ頻繁に起きてしまうのか」という原因を知り、そこに合った対策をとることです。
原因の多くは、生活習慣の乱れやストレス、ホルモンバランスの変化、寝室の環境、そして意外と見落としがちな寝具の不適合にあります。
今日からできることはたくさんあります。就寝前のスマホやカフェインを控える、寝る前は脳と体をリラックスさせる時間をつくる、室温や湿度を整えるなど、少しの工夫が中途覚醒を減らす第一歩になります。
それでも改善しない場合は、体の不調が隠れている可能性もあるため、早めに専門家へ相談することが大切です。
専門家コメント
上級睡眠健康指導士 今真一
今 真一