「寝る子は育つ」ということわざは「たくさん寝る子どもは大きくなれる」といった意味合いで使われてきました。
「ことわざ=迷信?」と疑う人も多いかもしれませんが、近年の研究により、子どもの睡眠と成長の深い関係が明らかにされています
そこで今回は「寝る子は育つ」の真相について、詳しく紹介していきます。
寝る子は育つの真相
「寝る子は育つ」ということわざには「よく寝る子は健康に育つ、発育がいい」という意味があります。
ことわざは、昔から言い伝えられてきた知恵や訓戒を含む言葉で、作り話や伝説ではありません。ことわざとして語り継がれるようになった理由があります。
成長ホルモンの分泌量がカギ
「寝る子は育つ」と言われるようになった本当の理由は「成長ホルモン」の分泌量にあります。
成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、骨や筋肉の成長を発達させるホルモンです。
身長を伸ばしたり、性的な成熟を促すなど、子どもが成長するうえで大切な役割を担っています。
ただ、成長ホルモンの分泌量は、睡眠の影響を受けて変動する特徴があります。
夜更かしが続いたり、睡眠をおろそかにすることは、成長ホルモンの分泌を妨げる行為です。つまり適切な睡眠が成長ホルモンの分泌を促し、結果的に「寝る子は育つ」につながります。
よく寝る子は頭が良くなる?
「寝る子は育つ」と同じような意味合いで「よく寝る子は頭が良い」と言われます。
これも、あながち間違いではありません。寝不足の子どもは「前頭葉の働きが低下する」という研究報告があります。
前頭葉とは大脳の前側に位置し、人間の言語や運動、感情や判断などをつかさどる器官です。
寝不足になると前頭葉を含む脳はダメージを受けて「脳活動が極端に低下していた」という報告があります。
やる気が出ない、キレやすくなるといった影響が確認されていますが、記憶力の低下もそのひとつです。子どもにも同様の影響があることが分かっています。
筑波大学研究情報ポータルでは、次のように述べられています。
睡眠は学習と記憶において重要な役割を果たしている可能性がある。(中略)1980年代に世界で初めて、ロックフェラー大学の彼の研究室が、動物は記憶の固定のために睡眠を必要とするという確固たる科学的根拠を得たのである。
引用:筑波大学研究情報ポータル
子どもの睡眠と学力の関係については、今現在も世界各国で研究が進められており「適切な睡眠がとれている子どもほど、成績がいい」といった研究結果も発表されています。
「寝る子は育つ」は何歳まで?
「寝る子は育つ」が当てはまるのは男子なら12歳前後、女子なら10歳前後までです。思春期が始まるまでの年齢がもっとも成長ホルモンの影響を受けやすく、睡眠がとても大切になります。
また「午後10時から午前2時までに寝たほうがいい」という説をよく聞きますが、何時に寝るかはあまり関係ありません。
成長ホルモンの分泌を促すために、本当に重要なことは、睡眠時間を確保できているかどうかです。
10~12歳くらいの小学生であれば、8時間以上の睡眠がとれているかを目安にしてください。ぐっすり深く眠れていると、成長ホルモンの分泌も活発になります。
「寝る子は育つ」を阻む3つの原因
ぐっすり眠れていない状態が続いて睡眠不足になると、子どもの成長に良くない影響があります。
ここでは子どもが睡眠不足になりやすい原因を3つ確認しましょう。
ゲームやスマホ
一日3時間以上ゲームやスマホを利用する子どもは、睡眠不足になる傾向にあります。
夜型の生活になりやすく、寝る時間と起きる時間が乱れやすいためです。また、ゲームやスマホに触れる時間が長くなると前頭葉が疲労し、集中力や注意力の低下も招きます。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れが、子どもの睡眠不足の原因になります。
朝食を摂らない、部屋にこもって運動をしないなどの生活を続けていると、イライラしやすくなります。
砂糖や塩分の多いジュースや菓子が簡単に手に入る現代では、睡眠不足が原因で肥満になる子どももいます。
家族の生活リズム
家族の生活リズムが、子どもの睡眠に影響を与えます。とくに子どもは、家族の中でも母親からの影響を受けやすいものです。
母親の睡眠時間が短いと子どもも短時間睡眠になりやすく、生活習慣が乱れやすい傾向にあります。
ある調査によれば「常勤やパートの仕事をしている母親の子どもは、睡眠時間が8時間未満である確率が高い」という結果も確認されています。
睡眠不足が与える影響とは
睡眠不足は、子どもの成長にさまざまな悪い影響を及ぼします。ここでは、具体的にどんな影響があるのか確認してみましょう。
- 食欲不振
- 眠気
- 疲労感
- 注意力の低下
- 集中力の低下
- 記憶力の低下
- 免疫力の低下
- イライラしやすくなる
- 成長の遅れ
子どもが睡眠不足になると、食欲不振や眠気を感じやすい状態になります。
とくに、まだ小さい子どもは、自分で眠気を意識して対処できません。
その結果、イライラして物に当たったり引きこもりがちになるなど、日常生活に支障をきたす場合があります。
また睡眠不足は、子どもの注意力や集中力を下げる原因です。勉強に集中できなくなり、ミスが増えて、イライラしやすくなります。
成長期にある子どもの睡眠不足は、健康面への影響も心配です。
不規則な生活により小児肥満のリスク、深刻化すると糖尿病や高血圧などの生活習慣病を合併する可能性が高くなります。
「ただの睡眠不足」で片づけないで、睡眠や食事といった生活習慣の見直しを子どもと一緒に実践しましょう。
まとめ
「寝る子は育つ」というこどわざには「大きい子どもになる」以上の意味があります。
その理由は「子どもの成長には、睡眠中に分泌される成長ホルモンが深く関係しているから」です。
成長ホルモンとは10歳~12歳前後まで活発に分泌されるホルモンで、主に身長を伸ばしたり、性的な成熟を促すように働きます。
ただ近年進められている研究により適切な睡眠がとれている子どもほど「成績がいい」ことが分かってきています。
「寝る子は育つ」を実践するなら、子どもが質のいい睡眠をとれる環境を大人が整えましょう。
本来なら成長ホルモンは、入眠から2時間程度で分泌量のピークを迎えますが、ぐっすり眠れている場合に限られます。
まず、ゲームやスマホを触る時間は一日3時間以内にする、家族の生活リズムも見直すなど、子どもの生活習慣や環境にも気を配りましょう。それでも「あまり眠れていない」「食欲不振や疲労感を感じている」のであれば、早めに医療機関を受診して適切な診断を受けてください。