「夜22時〜2時が“睡眠のゴールデンタイム”」──一度は聞いたことがあるこの言葉。
でも実は、この考え方は今では“古い”“嘘”とされることが多いって知っていましたか?
最新の睡眠研究では、「何時に寝るか」ではなく「入眠後90分間の質」こそが、成長ホルモンの分泌や肌の再生、疲労回復にとって決定的に重要だとわかってきています。
つまり、夜23時でも0時でも、最初の90分の眠りが深ければ“ゴールデンタイム効果”は得られるというわけです。
この記事では、「ゴールデンタイム=22〜2時」という考えがなぜ“嘘”といわれるようになったのか、そして最新の睡眠科学が明かす本当に大切な時間の考え方について、専門的な知見をもとにわかりやすく解説します。
この記事の監修者
身長175㎝/体重62㎏。眠ハックの運営者。睡眠の質向上には寝具が重要と気づいて7年経つ寝具選びのプロ。自宅の一室は検証のためのマットレスだらけ。マットレス以外にも睡眠の大切さを世の中に広げる活動をしている。
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「22時〜2時がゴールデンタイム」は本当?嘘?
結論から言うと、「22時〜2時がゴールデンタイム」というのは“ほとんど根拠のない古い考え方”です。
確かに、これまではこの時間帯が「成長ホルモンが多く分泌される」「肌の修復が進む」として、美容や健康分野で広く語られてきました。
しかし最新の睡眠研究では、時間そのものよりも“眠りの質”こそが重要であることがはっきりとわかっています。
「22〜2時神話」が広まった背景
この考え方が広まったのは、主に「成長ホルモンの分泌が深夜に多い」という初期の研究結果がきっかけです。
当時は生活リズムが今よりも早寝型だったこともあり、「22時ごろに寝るのが良い」と言われるようになりました。美容業界や健康本でも「22〜2時が肌の修復タイム」などと繰り返し発信されたため、今でも信じている人が多いのです。
なぜ“嘘”といわれるようになったのか
最新の研究では、成長ホルモンが最も多く分泌されるのは『何時に寝るか』ではなく『寝ついてから最初の90分間』であることが明らかになっています。
つまり、夜23時に寝ても0時に寝ても、この“最初の90分”が深いノンレム睡眠(※脳と体を最も回復させる深い眠り)であれば、ゴールデンタイムの効果はしっかり得られるということです。
また、成長ホルモンだけでなく「肌のターンオーバー」や「脳の老廃物の排出」なども、時間帯ではなく睡眠の質に強く影響されることが近年の研究で分かってきました。
最新の睡眠研究が明らかにした「本当に大切な時間」とは
「本当に大切なのは、“最初の90分間の深い眠り”」。
就寝時間そのものより、この時間の質が成長ホルモンの分泌や脳のデトックスに直結する、というのが最新の常識です。
- 成長ホルモンは「入眠直後の深い眠り」で最も多く分泌される
 - 脳の老廃物は「深い眠りの時間帯」に効率よく排出される
 - 最適な“ゴールデンタイム”は人によって異なり、体内時計や年齢にも影響される
 
成長ホルモンは「入眠直後の深い眠り」で最も多く分泌される
かつては「22時〜2時が成長ホルモンの分泌時間」と言われていましたが、現在では眠り始めてから最初の90分間が最も重要だとわかっています。
この時間は「深いノンレム睡眠(徐波睡眠)」が現れやすく、成長ホルモンの7〜8割がこのタイミングで分泌されるとも言われています。
このホルモンは筋肉や骨の修復、肌の再生だけでなく、代謝や免疫機能の維持にも深く関わるため、健康全体に大きな影響を与えます。
脳の老廃物は「深い眠りの時間帯」に効率よく排出される
近年注目されているのが、睡眠中に脳が自らを“掃除”する「グリンパ系」という仕組みです。
深い睡眠の間は脳内の空間が広がり、老廃物を運び出す流れが活発になります。このとき不要なアミロイドβなどが排出され、脳の健康が守られると考えられています。
この現象も、入眠後すぐの深い睡眠がカギです。浅い眠りが続くと脳の老廃物の排出効率が低下し、疲労感や集中力の低下につながる可能性があります。
最適な“ゴールデンタイム”は人によって異なる
最新の研究では、クロノタイプ(体内時計の個人差)や年齢によって、最適な睡眠時間帯が異なることもわかってきています。
夜型の人にとっては「23時〜7時」でも十分効果が得られますし、高齢になると深い眠りが減るため、最初の90分を守るための生活習慣がより重要になります。
つまり、「22時〜2時」という一律の時間ではなく、自分の生活リズムの中で“入眠直後の深い眠り”を確保できる時間帯こそが本当のゴールデンタイムです。
古い説と最新説の違いを比較|ここが大きく変わった!
睡眠に関する考え方は「時間重視」から「質重視」へと大きく変わりました。今の研究では「入眠直後の深い眠りをいかに確保するか」こそが最重要とされています。
下の比較表で違いを一目で確認してください。
| 比較項目 | 古い説(従来の考え方) | 最新の睡眠科学の考え方 | 
|---|---|---|
| 睡眠で大切なこと | 就寝時間帯(22〜2時) | 入眠直後の深い睡眠(最初の90分) | 
| 成長ホルモンの分泌 | 22〜2時に集中すると考えられていた | 入眠直後の深いノンレム睡眠でピークになる | 
| 効果を得る条件 | 「早寝」が必須 | 睡眠リズムが整っていれば時間は問わない | 
| 改善のための対策 | 寝る時間を早めることが中心 | 入眠の質を高める習慣・環境づくりが重要 | 
| 適した就寝時間 | 誰にでも22時前後が理想 | 体内時計や生活習慣で最適な時間は異なる | 
表の内容ポイント
- 「早く寝る=正解」ではなく、最初の90分をいかに深く眠るかがカギ。
 - 就寝時刻は多少遅くても、リズムが整っていれば効果は得られる。
 - 最適な就寝時間は人それぞれ。体内時計(朝型・夜型)や年齢で変わる。
 
“22〜2時”はすべての人に共通する正解ではありません。体内時計や生活リズムに合った時間に寝て、深く眠ることが何よりも大切です。
睡眠の質を上げるために今日からできる3つのポイント
大切なのは「最初の90分」を深く眠るための準備をすること。そのために今日から始められるポイントは次の3つです。
今日からできる3つのポイント
- 入眠前90分は「体と脳を休める時間」にする
 - 起床時間を一定にして体内時計を整える
 - 寝室環境を整えて“深い眠り”を引き出す
 
入眠前90分は「体と脳を休める時間」にする
寝る直前までスマホやPCを見ていると脳が覚醒したままで、深い眠りに入りにくくなります。
理想は就寝の90分前から副交感神経を優位にする時間を意識的に作ることです。ぬるめの入浴やストレッチ、照明を落とすなどして、体と脳を「休息モード」に切り替えましょう。
起床時間を一定にして体内時計を整える
体内時計(概日リズム)が乱れていると、入眠の質が安定しません。
もっとも効果的なのは、「起きる時間を毎日そろえる」こと。就寝時間よりも起床時間を一定にした方が体内時計が整いやすく、自然と眠気が訪れるようになります。
寝室環境を整えて“深い眠り”を引き出す
寝室の温度・湿度・光・音などの環境は、睡眠の質に大きく影響します。
理想は温度18〜20℃・湿度50〜60%。照明はできるだけ暗くし、スマホの光や音は遮断しましょう。寝具も体をしっかり支えるマットレスや通気性の良い寝具を選ぶと、深い眠りをサポートできます。
「入眠前の準備」「起床時間の固定」「寝室環境の最適化」。この3つが整えば、入眠直後の90分が自然と深くなり、“本当のゴールデンタイム”が生まれます。
まとめ|「ゴールデンタイム」は過去の常識。大切なのは“寝る時間”ではなく“眠りの質”
かつて言われていた「22時〜2時が睡眠のゴールデンタイム」という考え方は、今では古い常識です。
最新の研究では、健康や美容、脳のパフォーマンスを左右するのは「何時に寝るか」ではなく、“眠り始めてから最初の90分間をどれだけ深く眠れるか”だとわかっています。
この最初の90分に深いノンレム睡眠がとれていれば、成長ホルモンの分泌や細胞の修復、脳の老廃物の排出といった“ゴールデンタイム”の効果は、23時でも0時でも得られるのです。
そして、その質の高い眠りを実現するカギは、「寝る前の過ごし方」「起床時間の安定」「寝室環境の整え方」といった日常の工夫にあります。
時間にとらわれず、自分の生活リズムに合った形で“最初の90分”を大切にすることが、本当に質の高い睡眠と、翌日の自分のパフォーマンスを変える第一歩になります。
今 真一