マットレスの密度(D値)はウレタンの体積1m³あたりの重さで、へたりにくさ=耐久性の目安です。
寝心地を決める硬さ(ニュートン/ILD)とは別指標なので、D値+硬さの両輪で選びましょう。
目安:高反発は30D以上/長期使用は40D前後、低反発は同等耐久を狙うならやや高め。
この記事では重量からのD値計算と体重×寝姿勢別の推奨レンジもわかりやすく解説します。
この記事の監修者
身長175㎝/体重62㎏。眠ハックの運営者。睡眠で悩む人の相談を受けたり講習会を通して睡眠の大切さを世に広める活動をしている。マットレスや枕選びはYouTubeで好評受付中。
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結論:密度は“耐久性の目安”、硬さは“ニュートン”で見る
密度(D値)はウレタンの体積1m³あたりの重さ=フォームの詰まり具合を示し、へたりにくさ=耐久性の目安です。
対して硬さはJISに基づく押し込み試験の数値(N/ILD)で表され、寝心地そのものを決めます。選ぶときは、D値で“どれだけ長持ちしやすいか”を、硬さ(N/ILD)で“自分に合う感触か”を判断しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
密度(D値) | ウレタンの体積1m³あたりの重さ(kg/m³)。フォームの詰まり具合を示す。 役割:へたりにくさ=耐久性の目安。 |
硬さ(N/ILD) | JISに基づく押し込み試験の数値。 役割:寝心地そのもの(硬さ・フィット感)を判断。 |
判断の使い分け | D値=どれだけ長持ちしやすいか/ 硬さ=自分に合う感触かを確認。 |
選び方の目安 | D値:高反発は30D以上、長期使用は40D前後。低反発で同等耐久ならDをやや高めに。 あわせて確認:厚み・層構成(底付きや早期へたりを回避)。 |
目安としては高反発は30D以上、長期使用なら40D前後、低反発で同等耐久を狙うならやや高めのD。さらに厚みや層構成も合わせて確認すると、底付きや早期へたりの失敗を避けやすくなります。
D値の基礎|定義・単位・表記(D30=約30kg/m³)を一発理解
D値(密度)は、ウレタンフォームの体積1m³あたりの重さ(kg/m³)を示します。表記は「D30=約30kg/m³」のように読みます。また、D値はへたりにくさ=耐久性の目安で、硬さ(ニュートン/ILD)とは別指標です。
計算式|D=重さ(kg) ÷ 体積(m³)/シングル7kg×厚み10cm=約36Dの計算例
D値が公開されていない場合でも、サイズ(体積)と重量が分かればおおよその密度を計算できます。下の例では、シングルサイズ(195×100×10cm・重さ7kg)を使って手順を示します。
- 体積の計算(m単位に変換):195cm×100cm×10cm=0.195m³
- 重さ:7kg
- 密度:D=7 ÷ 0.195 ≒ 35.9 → 約36D
※ カバーや接着剤、複合層の重量が含まれるため、±数Dの誤差は見込んでください。
なお、この数値は概算です。カバーや多層構造の影響で誤差が出るため、他製品との比較用の目安として使い、最終判断は硬さ(N/ILD)や厚み、層構成も合わせて確認してください。長期使用を狙うなら、高反発で30D以上(できれば40D前後)を目安にすると失敗しにくいです。
よくある表記の読みとり方|D25・D30・D40の意味と位置づけ
目安としては、高反発は30D以上、長く使うなら40D前後が安心です。低反発で同等の耐久を求める場合はやや高めのDを選ぶと失敗しにくいです。
密度と“硬さ”・反発弾性は別物|耐久を見るのがD、寝心地を見るのが硬さ(N/ILD)
D値(密度)は「へたりにくさ=耐久性の目安」。
硬さ(N/ILD)はJIS等の押し込み試験で測る感触の指標、反発弾性は寝返りの軽さに関わる指標です。数値の役割が違うため、D値=寿命傾向/硬さ=好みや体格/反発弾性=動きやすさの三点を切り分けてチェックしましょう。
硬さの見方|ニュートン/ILDのざっくり基準(やわ・ふつう・かため)
カテゴリ | ニュートン(N)目安 | ILD目安 | 特徴の要点 |
---|---|---|---|
やわらかめ | 約80〜120N | 約10〜18 ILD | 包まれる感触。横向きで肩に優しいが、体重がある人は沈みすぎに注意。 |
ふつう | 約120〜160N | 約19〜26 ILD | 多くの人に合いやすい中庸。仰向け・横向けのバランス◎。 |
かため | 約160N以上 | 約27〜36+ ILD | 腰の落ち込みを抑える。重め体格・仰向け中心に向くが、肩周りはフィット調整が必要。 |
硬さは寝心地の核。同じD値でも硬さが違えば体感は別物です。必ずD値と硬さを両方確認してください。
反発弾性の役割|寝返りのしやすさに関与(D値とは独立)
反発弾性は、押し込んだ後にどれだけ素早く・強く戻るかの度合い(%など)で、寝返りのしやすさや動き出しの軽さに直結します。
反発弾性について
- 高め:寝返りが軽い/起き上がりやすい。やや弾む感触になりやすい。
- 中間:多くの人にバランス良し。沈みと戻りの両立。
- 低め:包み込む感触で体圧分散に優れる一方、動き出しに力が要ることも。
反発弾性はD値(密度)とは独立。
高密度でも低反発なら反発弾性は低め、中密度でも高反発なら反発弾性は高めになり得ます。最終判断は、D値(耐久)×硬さ(N/ILD:感触)×反発弾性(動きやすさ)をセットで見ましょう。
どのD値を選ぶ?|体重×寝姿勢×好みで“失敗しない目安”
まず前提として、D値(密度)は耐久の目安、硬さ(N/ILD)は寝心地の目安です。どちらか片方だけで決めず、厚みや層構成も合わせて判断すると失敗しにくいです。
体重・寝姿勢 | 推奨D値(目安) | 硬さ(N/ILD目安) | ポイント |
---|---|---|---|
〜60kg /横向き多め |
30D前後 | やわ〜ふつう(約80〜120N/ILD10〜18) | 肩の圧迫軽減。十分な厚み(10cm以上)とやや柔らかい表層。 |
60〜80kg /仰向け中心 |
35D前後 | ふつう〜かため(約120〜160N/ILD19〜26) | 腰の落ち込み抑制。総厚み12cm前後〜、中間層の支えを重視。 |
80kg〜 /腰サポ重視 |
40D前後 | かため(約160N以上/ILD27〜) | 底付き・へたり予防。高密度+厚み12〜14cm以上で安定感。 |
低反発で同等耐久 | 高反発より一段高め | 寝姿勢に合わせて調整 | 高反発ベース+低反発表層の2層構成で包まれ感と動きやすさを両立。 |
〜60kg・横向き多め|30D前後+やわ〜ふつうが沈み込みと圧分散のバランス◎
おすすめの推定D値
- 推奨D値:30D前後(高反発)
- 硬さ目安:やわ〜ふつう(約80〜120N/ILD10〜18)
肩や腰の圧迫を減らすため、表層は少し柔らかめ+十分な厚み(10cm以上)。ゾーニングやプロファイル加工があると肩周りが楽です。
60〜80kg・仰向け中心|35D前後+ふつう〜かためで腰の落ち込みを抑制
おすすめの推定D値
- 推奨D値:35D前後(高反発)
- 硬さ目安:ふつう〜かため(約120〜160N/ILD19〜26)
腰の落ち込み防止が最優先。中間層の反発力と総厚み(12cm前後〜)を確保しましょう。仰向けと横向きのバランスを取りたい人は、表層をややソフトにすると快適に感じやすいです。
80kg〜・腰サポ重視|40D前後+かためで底付き・へたりを予防
おすすめの推定D値
- 推奨D値:40D前後(高反発)
- 硬さ目安:かため(約160N以上/ILD27〜)
底付き・早期へたり回避のため、高密度+十分な厚み(12〜14cm以上)。基材はしっかり目、表層は薄めに調整すると体圧分散と保持力の両立がしやすいです。
低反発で同等耐久を狙うなら|高反発より“やや高めのD”を選ぶのがコツ
低反発は沈み込みが大きいぶん、同等の耐久を狙うならDを一段高めに。高反発(ベース)+低反発(表層3〜5cm)の2層で、動きやすさと包まれ感を両立できます。反発弾性や通気も必ず確認しましょう。
素材別の考え方|高反発/低反発/スプリング/ファイバーで“見る指標”が違う
素材ごとにチェックすべき指標が変わります。D値(密度)はウレタン系のみの目安で、スプリングやファイバーは別の指標をあわせて確認しましょう。
素材 | 主に見る指標 | 目安・相性 | 注意点 |
---|---|---|---|
![]() 高反発ウレタン |
D値(30D〜/長期40D〜)・硬さ(N/ILD)・厚み・反発弾性 | 寝返りしやすさ/耐久重視に◎ | 高Dでも薄いと底付き。通気対策も確認。 |
![]() 低反発ウレタン |
D値(高反発より一段高め)・硬さ・下層の支え・温度依存 | 包まれ感・横向きに◎ | 単層厚盛りは動き出し重め。2層構成が無難。 |
![]() スプリング |
線径・コイル数・巻き数・ゾーニング+表層フォームのD | 支持力・通気に強い。重め体格も対応可 | 詰め物が低密度だと早期へたり。 |
![]() ファイバー |
通気性・復元率/圧縮残留・繊維充填密度・水洗い可否 | 暑がり/湿気対策・お手入れ重視に◎ | 面で支える硬さになりがち。厚み/層構成を確認。 |
高反発ウレタン|実用は30D〜/長期は40D〜
高反発ウレタン
- 見る指標:D値(30D〜推奨/長期は40D〜)、硬さ(N/ILD)、総厚み、層構成、反発弾性。
- 相性:寝返りしやすさ・耐久重視。標準〜重め体格、仰向け中心。
- 注意:高Dでも薄いと底付き。通気対策(通気層・ローテーション)も併用。
寝返りの軽さと耐久の両立がしやすい万能型。厚みと通気を確保すれば長期でも快適。硬めが苦手なら表層をソフトにして肩周りの当たりを和らげましょう。
低反発ウレタン|同耐久なら“高めのD”が必要(沈み込みが深い分)
低反発ウレタン
- 見る指標:D値(高反発より一段高めが目安)、硬さ(N/ILD)、厚みと下層の支え、温度依存性。
- 相性:包まれ感重視・横向き多め。
- 注意:単層で厚いと動き出しが重くなることも。高反発ベース+低反発表層の2層が無難。
包まれ感を最優先するなら有力候補。高めのDと下支え層で型崩れを抑え、反発層を組み合わせれば寝返りの重さを補えて、横向きでも快適に眠れます。
スプリング系|主役はコイル仕様/表層フォームのDがへたりに効く
スプリング
- 見る指標:コイルの線径・コイル数・巻き数・ゾーニング、詰め物フォームのD値、パッドの耐久。
- 相性:通気・支持力・温度変化に強い。体格が重めでも沈みにくい設計が可能。
- 注意:表層が低密度だと早期へたりの原因。詰め物の密度と厚みを確認。
通気と支持力に優れ、季節の温度差にも安定。コイル設計で寝心地を作りつつ、詰め物の密度と厚みを確認すれば、早期へたりを防いで長く使えます。
ファイバー系|D表記外が多い/“通気・復元率・繊維密度”を見る
ファイバー
- 見る指標:通気性(空気の抜けやすさ)、復元率/圧縮残留、繊維の充填密度・太さ、水洗い可否。
- 相性:暑がり・湿気対策・丸洗い重視。
- 注意:通気は高いが面で支える硬さになりがち。層構成や厚みで体圧分散を確保。
蒸れにくさと丸洗いの手軽さが魅力。復元率と繊維充填を確認し、必要に応じて薄いウレタン層を重ねると体圧分散が改善し、当たりも穏やかになります。
メーカーがDを出していない時|重量から“自力で密度を逆算”する手順
密度の逆算手順
- サイズをmに換算
例:195cm×100cm×10cm
→ 1.95m×1.00m×0.10m - 体積を出す(長さ×幅×厚み)
- 0.195m³ 本体の重さ(kg)を確認
梱包を外した実測値がベター。カバー重量が分かれれば差し引き。 - 計算式
D=重さ(kg) ÷ 体積(m³)
例) 7kg ÷ 0.195m³ = 35.9 → 約D36
波形加工やキルティングがある場合は平均厚みで計算すればよく、4">±数Dの誤差は想定してください。さらに、多層構造やカバー重量を含めて計算すると、実際よりDがやや高めに出やすい点に注意が必要です。なお、<st">D値は耐久性の目安に過ぎないため、最終判断は硬さ(N/ILD)・総厚み・層構成も合わせて行いましょう。
価格とD値の関係|高Dはコスト・重量UPだが“長持ちで結果オトク”という考え方
高密度(高D)になるほど原材料量が増え、成形・輸送コストと本体重量も上がります。
一方でへたりが遅く交換周期が伸びるため、トータルでは割安になりやすいです。迷ったら購入価格を想定使用年数で割る「年あたりコスト」で比較しましょう。
例:40D相当・5.5万円を9年使う=約6,100円/年、30D相当・4万円を5年=8,000円/年
なお、密度だけで決めず、硬さ・厚み・層構成・保証もあわせて確認してください。
“高密度=硬い”は誤解|Dだけ見て買うと失敗。厚み・硬さ・層構成も同時チェック
D値は“へたりにくさ”の指標で、硬さ(N/ILD)とは別物です。総厚みや層構成で体感は大きく変わるため、**D値+硬さ+厚み(層)**の三点セットで判断しましょう。
よくある落とし穴|高Dだが薄い→底付き/低Dの厚盛り→早期へたり
高密度でも薄いと体圧が貫通して底付きします。逆に低密度を厚くしても初期は柔らかく感じるだけで、早期へたりにつながりがちです。
同じDで寿命が違う理由|発泡技術・配合・セル構造・層の組み合わせ
同じD値でも、発泡技術や配合、セルの均一性、接着品質などで耐久は変わります。素材の作りと層の組み合わせ、さらに使用環境や手入れまで含めて寿命が決まります。
使い方で寿命を伸ばす|ローテーション・除湿・通気・カバー洗濯の実践ポイント
ローテーションは2〜3か月ごとに頭⇄足を入れ替え、両面仕様なら表裏も。各マットレスの取扱説明書で可否を確認しましょう。
除湿・通気については、除湿シート+ベッドフレーム/すのこを併用し直置きを避けるのが無難。週1回の立て掛け換気、室内湿度は40〜60%目安に保つのがベターです。
カバー洗濯は、月1目安でネット使用・表示に従いおこないましょう。本体は基本洗わず陰干し、シミは軽く拭き取り(溶剤・強アルコールは避ける)がおすすめです。
汗・皮脂の浸透、汚れとへたり予防のためにも敷パッドやベッドパッドを使用すると長持ちしやすくなります。
より詳しい手順は「マットレスのローテーション」と「除湿シートおすすめランキング|選び方・使い方」の別記事で解説しています。
迷ったらこの3択|30D(軽量/コスパ)・35D(標準)・40D(長期)
迷ったら「39D・35D・40D」の3択から検討するのがおすすめです。
30Dは軽量&コスパ重視(〜60kgやサブ用途に◎)、35Dは毎日使いの標準(60〜80kgに無難)、40Dは長期使用・重め体格や腰サポ重視向け。なおDは耐久の目安なので、最終判断は硬さ(N/ILD)と総厚み・層構成も合わせて行いましょう。
30D|軽量・コスパ重視
30Dは軽量で扱いやすく、価格も抑えやすいのが魅力です。体重が60kg以下の方や来客用・サブ用途に向いており、厚みは10cm以上、硬さはやわ〜ふつうを選ぶと肩の圧迫を減らせます。へたりはやや早めなので直置きは避け、定期的なローテーションで寿命を伸ばしましょう。
35D|標準・迷ったらコレ
35Dは迷ったらまず試したい標準帯で、体重60〜80kgの方が毎日メインで使う想定に適します。厚み12cm以上、硬さはふつう〜かためが目安で、高反発ベース+表層ややソフトの2層構成にすると体圧分散と支えの両立がしやすいです。通気性確保のためベッドフレーム+除湿対策もセットで行いましょう。
40D|長期使用・安定感
40Dは長期使用と安定感を重視する方向けで、体重80kg以上や腰のサポート重視の方に向いています。厚み12〜14cm以上、硬さはかためを基準にすると底付きや早期へたりを防げます。重量・価格は上がりますが交換周期が延びやすく、年あたりコストでは有利になりやすい点がメリットです。
よくある質問(FAQ)
Q1. マットレスの密度(D値)とは何ですか?
A. ウレタンフォームの**体積1m³あたりの重さ(kg/m³)**を指します。たとえば「D30」は約30kg/m³という意味です。耐久性の目安として確認しておくと安心です。
Q2. 何Dあれば安心ですか?
A. 高反発ウレタンなら30D以上で実用的、長く使いたい場合は40D前後を目安にすると失敗しにくいです。低反発は同等の耐久性を狙う場合、やや高めの密度を選ぶのがおすすめです。
Q3. 密度が高いほど硬いのですか?
A. いいえ。密度(D値)と硬さは別の指標です。硬さはニュートン(N)やILDで評価されます。選ぶときは密度(耐久性の傾向)と硬さ(寝心地)の両方を確認してください。
Q4. スプリングマットレスでも密度は見るべきですか?
A. スプリングではコイル仕様(線径・コイル数・巻き数など)が主役ですが、表層のウレタンの密度もヘタりに影響します。購入前に可能なら表層フォームの仕様もチェックすると安心です。
Q5. D値は自分で計算できますか?
A. はい、D=重さ(kg) ÷ 体積(m³)で概算できます。
例:シングル 195×100×10cm=0.195m³、重さ7kgの場合 → 7 ÷ 0.195 ≒ 36D となります。※カバー重量や複合層により±数Dの誤差は見込んでください。
まとめ|D=耐久の目安/硬さ=寝心地。両輪で選べば失敗しない
D値(kg/m³)は“へたりにくさ”の指標、硬さ(N/ILD)は“感触”の指標です。購入時はD値+硬さに加え、厚み・層構成・反発弾性も同時にチェックしましょう。
迷ったら30D(軽量/コスパ)・35D(標準)・40D(長期)を基準に、低反発は同等耐久ならDを一段高めに。Dが非公開なら重さ÷体積で概算し、使い方はローテーション・除湿・通気・カバー洗濯で寿命を伸ばせます。
結局は、耐久(D)×寝心地(硬さ)×設計(厚み/層)の総合評価が失敗しない近道です。
今 真一