多くの人は、「良い寝具=高い寝具」だと思っています。
もしくは「良い寝具=腰をしっかり支えてくれるマットレス」だと信じています。
かつての自分も、そう考えていました。硬めのマットレスこそが正解で、沈み込まないことが体にいい。そう思い込みながら、数えきれないほどの寝具を試してきました。
でも、ある時ふと思ったんです。
「自分は“休んでいる”つもりで、ずっと“踏ん張って”いないか?」と。
この記事の監修者
身長175㎝/体重62㎏。眠ハックの運営者。睡眠で悩む人の相談を受けたり講習会を通して睡眠の大切さを世に広める活動をしている。マットレスや枕選びはYouTubeで好評受付中。
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「支えられる寝具」が体を休めてくれるとは限らない
腰痛対策、姿勢保持、体圧分散。
寝具の説明でよく見る言葉です。
もちろん、どれも大切な要素ではあります。
けれど、実際に寝具を使い続けて分かったのはひとつでした。
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体が休んでいない寝具は、どんなに高性能でも“良い寝具”とは言えない。
硬すぎるマットレスは、体を支えてくれます。
でも同時に、どこかに常に力が入ってしまう。
「支えられている安心感」ではなく、「落ちないように踏ん張っている緊張感」。
この違いに気づいてから、自分の寝具選びは大きく変わりました。
体を預けられるという感覚
良い寝具の基準として、いま一番大切にしているのはこれです。
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体を“預けきれる”かどうか。
- 呼吸が自然に深くなる
- 肩が少しずつ落ちていく感覚がある
- 腰に無意識の力が入らない
- 「頑張って寝よう」としなくていい
こうした感覚が生まれる寝具こそが、自分にとっての「良い寝具」です。
それは必ずしも高価なものである必要はありません。むしろ、高すぎるブランド品よりも、地味で目立たないマットレスの方が心地よいこともありました。
なぜ“預けられる環境”が重要なのか
眠りは、気絶ではありません。
眠っているあいだ、体は修復され、脳は整理され、感情はリセットされていきます。
これは「安全」が感じられていないと起こりにくい状態です。
どれだけ高機能な寝具でも、
- 違和感がある
- 緊張が抜けない
- どこか不安になる
こうした感覚が少しでもあると、体は「守るモード」を解除できません。
だからこそ、スペックではなく、“どれだけ身を委ねられるか”という感覚の方が大切だと考えています。
良い寝具は「正しい寝姿勢」をつくるものではない
よく「正しい寝姿勢」という言葉を見かけます。
仰向けが正しい、横向きは腰に悪い、猫背寝はだめ。でも正直に言ってしまうと、完璧な寝姿勢なんて存在しません。
人は一晩で何度も寝返りをします。無意識のうちに、自分にとって楽な形を探し続けています。
本当に大切なのは、「正しい形」を固定することではなく、自由に動けて、自然に落ち着ける場所であることです。それができない寝具は、どれだけ理論上は優れていても、体は休まらないものです。
眠ハック的に考える「良い寝具」という基準
いま自分が大切にしている判断基準は、とてもシンプルです。
- 体が勝手に力を抜いていくか
- 呼吸が浅くならないか
- 「よし、寝よう」と意気込まなくていいか
寝具選びに迷ったときは、この3つだけを意識しています。
値段やランキングよりも、「ここなら体を預けてもいい」と直感的に思えるかどうか。
それが、今の自分にとっての“良い寝具”です。
まとめ:良い寝具とは「頑張らなくていい場所」
良い寝具は、体を支えるための道具ではありません。
頑張らなくていい場所をつくるための、環境です。
預けても大丈夫。
守ろうとしなくていい。
力を抜いていい。
そう思えたとき、初めて眠りは“回復”になります。
寝具選びに迷ったときは、ぜひ「支えてくれるか」ではなく、「預けられるか」という視点で見てみてください。
今 真一