ノンレム睡眠は、質の良い睡眠を得るために重要な睡眠サイクルです。
実際に、このノンレム睡眠が減ると身体にどんな影響がでる可能性があるかご存じですか?
今回はノンレム睡眠(深い眠り)が足りていないことのからだへのよくない影響についてのおはなしです。
目次
ノンレム睡眠とは
まずは基礎知識。
睡眠の種類には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のふたつの睡眠があります。
睡眠中に、このふたつの睡眠が約90分の周期で行き来するといわれています。
最初の1,2時間が重要
ノンレム睡眠には、睡眠の深さによるレベルがあります。
特に眠りについてから、始めの約3時間がいちばん深いことが知られています。
その3時間が、脳の休息にだいじな時間となります。
このときに、女性にうれしい効果でもあるアンチエイジングやダイエットなどにたいせつな成長ホルモンの分泌が多くされるんです。
ゴールデンタイムはウソ?
世の中には22時から深夜の2時までのあいだの睡眠は、ゴールデンタイムだという定説があります。
この説は成長ホルモンが睡眠において重要という点では違いありません。
ただ最近の研究で、ゴールデンタイムは時間で決められるわけではなく「ノンレム睡眠がしっかりとれているかどうか」とされていて、ノンレム睡眠時に睡眠によるさまざまな恩恵が受けられるという見解です。
いうなればノンレム睡眠=ゴールデンタイムともいえるわけです。
つまり、睡眠の質を上げなければ、ゴールデンタイムの効果を得られないんです。
ノンレム睡眠の減少と増えるリスク
ノンレム睡眠(深い睡眠)の割合が減ることのリスクが、一般にでてくるといわれている睡眠時間は「6時間半未満」です。
そのリスクは精神的なものから身体的なものまで、そして命にかかわるものまであります。
しっかりと把握して対策に努めましょう。
睡眠不足リスク一覧
■生活習慣病
■肥満
■風邪などへの抵抗力
■仕事場への影響
■うつ病
■イライラ(ストレス)
■日中の慢性的な眠気
※以下参考資料:「日本における睡眠健康教育の現状と課題」 白川修一郎
生活習慣病
不眠症状(入眠障害,中途覚醒など)のある人は、生活習慣病の中でも「糖尿病」と「高血圧症」のリスクが高まるといわれています。
糖尿病 | 約2~3倍 |
高血圧症 | 約2倍 |
肥満
肥満は生活習慣病の最重要要因のひとつです。
睡眠不足は関係なさそうですが、実は睡眠不足が食欲や代謝に大きく関わることから「肥満」にもつながってくるのです。
少し古いですが、コロンビア大学が1971年ころから1992年の間の9,000人前後への追跡調査でこんな報告があります。
7~9時間の睡眠時間のひとに比べて、4時間以下睡眠のひとは肥満率が75%も高く、5時間睡眠のひとは50%も高かったという報告です。
他にも食欲増進ホルモンが分泌される量が多くなり、食欲抑制ホルモンがすくなくなってしまうというスタンフォード大学の調査結果もあります。
風邪などへの抵抗力
2009年の新型インフルエンザ流行時に、22歳~55歳の男女153名の感染者を対象に調査した結果があります。
睡眠効率(睡眠の質の指標)が低かったひとは、高いひとに比べて5.5倍の症状発症率となりました。
仕事場での影響
日本の事務職系男女4868名を対象とした調査があります。
睡眠の質の低下での影響がおきる確率は、しっかり睡眠がとれている人と比べたときの増える割合は以下のとおりです。
症状名 | 睡眠の質が高い人と比べたとき |
病欠 | 1.89倍 |
身体的不健康感 | 4.28倍 |
精神的不健康感 | 4.98倍 |
職業活動性低下 | 2.35倍 |
人間関係悪化 | 2.44倍 |
事故率(加害者・被害者) | 1.48倍 |
特に気をつけてほしいのは日常的に車を運転するひとです。
眠気が原因でひやっとした経験がある人もたくさんといると思います。
事故のリスクを質の良い睡眠をとるだけで下げられるんだから安いもんです。
うつ病
フランスで60歳以上と20歳以上をを対象とした調査があります。
うつと睡眠不足の関係についてです。
・対象:65歳以上の男女3824名
・調査内容:2年後と4年後の不眠・抑うつ・日中の過度の眠気の関連性
調査結果
日中の過度の眠気は2.05倍の危険率で抑うつ症状を増大。
睡眠の質的悪化、入眠障害、睡眠維持困難もうつに対しての危険因子。
日中の眠気というのは夜によく眠れていないことから起こります。
そのことが原因でうつ病に対してのリスクが2.05倍も高まるということです。
イライラ(ストレス)
前述したうつ病との関係のように、睡眠不足は精神的な症状を引き起こす要因とされています。
睡眠には、あたまのなかを整理するという役割もあります。
寝ているあいだに無意識化でストレスも軽減されていくのです。
眠気の強い日や、あまり寝れなかった次の日は、ちいさなことでいらいらしてしまいませんか?
しっかり睡眠がとれなければ「ストレスが減らない→眠れなくなる」をくり返して他の睡眠障害まで引き起こしてしまいます。
日中の慢性的な眠気
日中の眠気、特にランチ後の眠気。
実は食後で血糖値が上がったからという理由だけではないことが近年言われています。
夜の睡眠時間が6時間を切っている人は、昼間に眠くなることが多いでしょう。
ノンレム睡眠が足りないのは女性の方が多い
アメリカのデューク大学の調査でこんなものがあります。
・調査対象:18~65歳の健康な210名
・調査内容:睡眠の質と量、心理的・身体的な健康状態
調査結果
女性だけに定期的な睡眠不足のひとに[血糖値の調節に異常/攻撃性の高まり/肥満値上昇リスクの上昇/ストレスレベルの上昇/うつ病のリスク増大]の兆候がみられた。
女性だけにこの結果がみられたことが注目すべきで、これは男性にはテストステロンというホルモンが女性に比べて多いことが要因とされています。
テストステロンは睡眠不足による悪影響から脳を守る役目があると予想されています。
女性は睡眠不足でおなかが空きやすくなる傾向にもあります。
もしパートナーがいる方に、この記事を読んでいただいているならこれだけは伝わればいいなと思います。
それは「睡眠時間」について考えることが仲良しの秘訣かもしれません。
ということです。
さいごに
睡眠時間が長ければ大丈夫。
いいえ違います。
重要なのは「睡眠の質」であって「時間」ではありません。
いま抱えている人間関係の悩み、会社での悩み、睡眠がよくとれていないことが原因かもしれません。
日々の生活を見直すことによって日中の眠気や肥満体質などいろんなことが改善できる余地があるのです。
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